高嶺格のクレイ・アニメーション

 わたしいまめまいしたわ展の会場で、一際耳障りな音は、この甲高いゴッド・ブレス・アメリカの歌だ。
 この作品の前だけに、人だまりができてしまう。
 否応なしに、アメリカの愚行に人々が巻き込まれていることを象徴しているかのようだ。

クレイ・アニメーション《God Bless America》は、国立国際美術館のテキストによると、「作家がセットの中に寝泊まりしながら18日間かけて撮影したもの」で、「2トンもの粘土と格闘する、大変な肉体労働の」日々だったのだという。作品を見てみると、男女2人での協同作業であることが分かる。その様子はどこか、ジョン・レノンオノ・ヨーコが、ハネムーン先のホテルで行ったパフォーマンスを彷彿とさせる。

 セットの真中にどっしりと据えられた大きな油土の塊が、目まぐるしく変貌してゆく。強く印象に残っているのは、カリカチュアされたブッシュ大統領の頭部が変貌を重ね、「God bless America My home sweet home」と惚けたように歌ってみせる場面である。セプテンバー11の惨事から立ち直ろうとする人々が口ずさむ愛国歌が、いつしか偏狭さを帯び始めるや、ブッシュの軍勢はアフガニスタンに侵攻した。愚かな過ちの上に、更に間違いを塗り重ね、世界を抜き差しならぬ事態へと向かわせようとする彼らの時代を象徴する歌として、やがて記憶されるのだろう。私はその歴史の評価を、油土の奇妙な歌声に聞くような気がした。