自民党葬に税金を使うな

国葬になるのは、天皇の葬儀(大喪の礼)だけだ。単なる自民党の功労者の葬儀に大半の国民が賛成しない事実に反して、実施しても、国葬とは言えない。
 外交の場と利用するのは、故人の弔意にそぐわない。
結局、安倍派の祭典であり、弔意、敬意をしめすことはできない。
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社説[安倍氏国葬]異例の扱い 疑問が残る
2022年7月17日 07:48
 岸田文雄首相が、安倍晋三元首相の「国葬」を営むと発表した。

 遊説中だった安倍氏が凶弾に倒れた事件は、国内外に衝撃を与えた。志半ばで亡くなった安倍氏には心から哀悼の意を表する。その死を悼む国民は多く、弔意の場は必要だろう。しかし国葬には慎重な判断が求められる。

 国葬は法的根拠がない。戦前の「国葬令」は1947年、政教分離などの観点から廃止された。戦後亡くなった首相経験者の国葬は67年の吉田茂氏だけで、当時の佐藤栄作内閣で特例として閣議決定された。

 ノーベル平和賞を受賞した佐藤氏は政府、自民党、国民有志主催の「国民葬」。その他は多くが「内閣・自民党合同葬」で送られ、基準はあいまいだ。安倍氏国葬は異例の扱いとなる。

 岸田首相は、在任期間が戦後最長であることや震災復興、経済再生、日米同盟基軸の外交展開を理由とする。

 しかし汚染水処理もままならない原発事故を「アンダーコントロール(制御下にある)」とした安倍氏の発言には強い批判もあった。

 アベノミクスでも賃金は上がらず、デフレ脱却の道筋も見えない。外交で日米豪印の枠組み「クアッド」などを推進した一方、国内では集団的自衛権の行使容認や「共謀罪法」の成立で評価が割れた。

 森友、加計学園問題や公文書改ざん問題も記憶に新しい。

 国論を二分した安倍氏の政策は評価が定まっているとは言えない。なぜ国葬なのか。政府は追悼の在り方を再考すべきだ。

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 とりわけ沖縄において安倍氏への評価は厳しい。

 安倍氏は、サンフランシスコ講和条約の発効日を「主権回復の日」として首相在任中の2013年、初めて政府主催で式典を開催した。

 沖縄は講和条約で米国の施政権下に置かれることになった。発効の日は「屈辱の日」と呼ばれ、式典開催については世論調査で県民の7割が「評価しない」と回答した中での強行だった。辺野古の新基地建設をはじめ、こと沖縄政策に対しては強硬姿勢が目立つ政治家でもあった。

 戦後唯一、国葬で送られた吉田氏について、当時の佐藤首相は追悼の辞で「戦後史上最大の不滅の功績」として講和条約の締結を挙げた。

 吉田氏に続いて安倍氏国葬で送られることに対し、県民からは反発の声が上がっているが当然だ。

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 国葬は全額国費で賄われる。2020年の中曽根康弘氏の合同葬は約1億9千万円のうち9643万円に税金が投入された。財政が厳しい中、葬儀の在り方にも注視が必要だ。

 55年前の国葬では当時の文部省が学校に弔旗掲揚や黙とう、午後は授業を行わないことなどを通達して批判を浴びた。文科省は中曽根氏の合同葬でも国立大に弔意を表明するよう求める通知を出した。

 憲法は「内心の自由」を定めている。喪に服すも、服さないも個人の自由である。政府はそのことを重んじるべきだ。