『花よりもなほ』

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キムキム兄やんは、ほとんど褌だけで尻まるだしで、奮闘していましたね。
評判のよい「花より」を丸の内ピカデリーで見てきました。
現在、新宿ピカデリーが改築中のため久々に銀座まで足をのばしました。

この映画は、赤穂浪士の仇討ちの異聞(裏話)を描いたもので、9.11に対する
是枝裕和の答えを暗示したものです。

こうかくと何か堅苦しいように感じられますが、少しも堅苦しい内容の映画では
ありません。

店子(テナナント)に正月にふるまわれる餅は、長屋の便所からくみ上げた糞を
百姓に売った金で、まかなわれたものです。

復讐(父親・君主の仇討ち)といった馬鹿げたものを、幸福にかえる。

このことが言葉にこめられているのです。

赤穂浪士の仇討ちも、会社の社長の失敗によって倒産した会社の社員たちが
自分たちの名誉回復(いまだったらさしずめ再就職)のために行なった
デモンストレーションだったと考えれば、納得できるものがあります。

忠臣蔵は日本人がもっとも好む物語で、明治時代から国家への忠誠を賛美した美談と
読み替えることで、大衆的な人気を博したものです。

宮沢りえのキャラは『たそがれ清兵衛』とまったく変わらないもので、清純で一途な
女性をよく描いています。

あくまでも軽く、貧乏がもっている荒廃の匂いが感じられないところが、少し不満でした。
前作のドキュメンタリータッチの『誰も知らない』には、どこか虚無的なものと限りない
無邪気さが同居していたのですが、それはどこにいったのでしょうか。

江戸の庶民は現代人より、ずっとずっとタフだったのかもしれませんね。