マルレーネ・デュマス展
プロークン・ホワイトとは
「『ブロークン・ホワイト』には、いろんな意味を持たせています」と言う。ホワイトは「人種」でもあり、絵画を構成する「色」でもある。「ブロークンは『折れた』『壊れた』のほか、『もうピュアではない』とも解釈できる。もちろん政治的な意味も」
アパルトヘイト下の南アフリカで白人として育った経験が、色濃く投影されている。絵画の色について、彼女はこんなことも言った。「皆、きちんと色を見ない。純粋な白や黒は描かれていない。白と黒の両極から生まれてくる多様性を見るべきです」。差別や偏見、絶え間ない紛争など、混迷する現代社会のポートレートを、デュマスは描き続けている。
7月1日まで、月曜休館。(黒沢綾子)
また、作者自身は、カタログの中でこのように注釈を行なっています。
「ブロークン・ホワイト」は、キリスト教社会における純潔・処女性とも関わっている。教会の挙式では、花嫁が再婚者もしくは、それに準ずる場合、白ではなく、オフ・ホワイトのウェディング・ドレスを着用する。
「ブロークン・ホワイト」とは、このオフ・ホワイトを指し、純白に他の色が混じった色、すなわち純潔が汚されたことを表す。
『ブロークン・ホワイト』より
確かに、白人の肌は白を基調にして、ピンクがかっています。それでは日本人、黄色人種の場合はどうでしょうか。
白と黒の中間色はグレーですが、肌の色の場合は、黄土色(yellow oecle)になります。
アジア人は、西洋文化とアフリカの中間ではなく、独自の多様な文化をもっている。
西洋文化と遭遇することで、混乱(mixed up)してしまったわけですね。
しかし、この混乱(disorder,chaos)の中に、西欧文明には失われた豊かな可能性があるのです。
アラーキの写真を元にして「ブロークン・ホワイト」は描かれました。世界的に最も注目を浴びているアーティストのひとり、マルレーネ・デュマス(1953?、南アフリカ生まれ、アムステルダム在住)の展覧会がついに日本で開催されます。
身近な人物やマス・メディアに流通する写真や映像メディアを題材とした、独特の繊細で鮮烈な人物像を創造する彼女の作品は、自身が育ったアパルトヘイト下での経験をベースに、差別や偏見、そして民族やセクシュアリティ、ジェンダーなど、現代社会が抱える複雑で多様な問題を喚起しています。
この展覧会は、初期のポートレイトのシリーズから代表作である《Female》(211点のドローイングシリーズ)、そして注目の新作も含めたデュマスの魅力の全貌を伝えるものです。
その写真は、に掲載されています。
最新の写真集は「6×7反撃」