大佛次郎論壇賞奨励賞//本田由紀


教育の世界で、コミュニケーョン力や創造性といった「人間力」が吹聴されている。学力一辺倒からの解放と思いきや、実際は人の内面すら評価する更に激しい競争社会ではないのか。−中略-現代の若者を取り巻く状況をハイパー・メリトクラシー(超業績主義)と名付け、警鐘を鳴らした。
12月13日 朝日朝刊から 引用

教育の課題が、学力一辺倒からの解放であれば、解答の鍵は、工業高校や農業高校などの学校教育の専門性を高めることにあるのだろう。

新しい能力社会脱出の鍵

ただし、実体はどうなのだろうか?

1 職業高校の中にも格差がある。
2 優秀な高校は、普通科以上に資格の習得に熱心であり、学力競争とは別の競争原理が働いてはいないか。
3 9月の徳山高専の女子学生殺害事件を思い出して見よう。これは殺人事件までに発展した特殊なケース
であるが、そういった職業高校の中にも人間関係のゆがみや屈折がありはしないだろうか?

このILOHAブログの著者は若年労働問題の専門家でも教育学者でもないので、労働政策について提言する立場にはないが、本田さんの言っているのは、学力とは違った目に見える尺度による動機付けを与えることで、学力社会からはじき出される層を、もう一度労働市場に投入させるような具体的な方策をいっているのかもしれない。

コミュニケーション力

「人間力」について擁護するつもりは、あまりない。

ただ次から次へと
場の空気を読む力
スルー力 (高林哲)
コメント力 (斎藤孝)などと、競争社会の"力"信仰を反映した実体のともなわない、コピー概念ができるのはいただけない。

もっとも大佛次郎賞の選考委員はすべて、本田論文の中の
家庭教育での母親の重要性を主張した箇所を評価していたのは記憶すべきである。