ピンホール・ルーム

 伝説となっている、一部屋を針穴写真機にしてしまった作品

第3章「暗い部屋と『わたし』」は山中信夫の「ピンホール・ルーム」を暗い個室の中に展示し、まさに彼がやったであろう状況の中で見せている。山中信夫は自分の部屋の窓を塞いで目張りをし、自室をカメラ・オブスクーラとして、自分が見慣れた外の景色を倒立像として得た。暗い部屋は自分の内面と対話を始め自己を養う空間となる一方で、カメラ・オブスクーラとなって飛躍し外の景色を倒立像として映す。見慣れた景色が倒立像となり、見慣れないものとして異化されるが、注目したいのは下に山中自身の正立像が影として写り込んでいること。山中の身体が影としてこの作品に刻まれ、その山中の身体を軸に世界がぐるっと反転し、新たな驚きを持って立ち上がってくるように見える。山中はこのピンホール・ルームで何をしようとしたのか。「わたし」と「世界」と「写真(カメラ・オブスクーラ=暗い部屋)」の関係を映し出そうとしたのではないか。そう思えてならない。

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