オイデプス

 探偵小説の元祖は、オイディプス王だ。これは、父親を殺した真犯人捜しの結末をめぐる悲劇。父殺しの犯人は自分で、しかも母親とまぐわい、子供をつくっていた。観客は、このネタばれ劇を何度も繰り返し見る。そして、殺人の真相が明らかになる場面で、初めて見たごとくに驚き、オイディプス王が、自ら目をつぶす最後に涙する。
 自分で殺した相手を忘れる強引な展開こそ、悲劇を生むのだ。だから、お話を知らない者が、この悲劇を笑う。
「オイディプース王」を読む (講談社学術文庫)