北国シネマで逢いましょう

bunkamura タンゴ・冬の終わりに

清水邦夫全仕事 1981~1991


久しぶりの再演。1986年にパルコ劇場で観劇した平幹二郎名取裕子の名演が懐かしいですね。

もう20年も以前になります。その当時はカウンセリングや精神障害のこともあまり知らず
主人公の狂気は、統合失調症なのか、人格障害なのか何なのだろうと思ってましたが

今見返してみると、覚醒剤の後遺症によるフラッシュバックやアルコール依存症*1による健忘みたいですね。

もちろん、作者の空想が生み出した狂気ですが、虚構ゆえに錯乱した主人公のこころの世界がリアルに舞台上に
展開していきます。

前回は、カブリつきで見ていたので、名取さんの横たわる顔が、1mほど前にあって、白粉の香りと汗でむせ返るようだった。

その香りはたぶん僕が死ぬときまで、忘れることはないでしょう。

堤真一のチャレンジ

シェークスピア役者の平さんに、清水邦夫が当て書きしたこの作品に堤さんが挑戦。

そのイメージを堤真一がどれだけ越えるかみものです。

堤真一やつれている。

やつれて頬がこけ、より凄絶さをました演技。

野村萬斎さんが、オイデプス王を初演したときも、みごとにやつれていました。

それぐらい蜷川演劇は消耗するのです。

平さんの少年は、何か性を超越した妖艶さがあったのですが、堤さんは思春期の少年*2の"もろさ"や"みずみずしさ"をあますことなく表現しています。

見事な絡み(アンサンブル)

29日は千秋楽とあって、楽の一日前の日。舞台はもうこなれています。一か所、段田安則さんが、セリフを飛ばしても見事に
舞台はつづいていきます。さすが。

段田さんの芝居も安心してみれます。常磐貴子さん、初舞台。

主人公に弄ばれた新人女優を力演してます。ここでも絶叫の蜷川調のセリフ。

ビジュアル系 好みの蜷川さんの眼鏡にかなったのでしょうね。

高橋洋さん、藤原竜也さんと二人で、蜷川メソッドを受け継ぐ代表的な若手俳優さん。高橋さん絶叫しても、すねた演技しても光りますね。

87人で演じる大モブ*3シーン

イージーライダーが舞台上に組まれた映画館の観客席に投影される最初の群衆シーン、シネマの壁が崩れ落ち、スローモーションの中、桜吹雪が舞うフィナーレは圧巻でした。

日本海に面した町の古びた映画館。清村盛は有名な俳優だったが、3年前に突然引退して、妻ぎんとともに生まれ故郷の弟が経営する映画館でひっそりと暮らしている。そこへ、昔の俳優仲間であった名和水尾と彼女の夫、連がやってくる。かつて盛と水尾は激しい恋に燃えていた。訪れた水尾が見たのは、すっかり狂気にとりつかれてしまった男の姿だった…。

蜷川幸雄 清水邦夫

*1:ただし実際の患者は、しゃべり方がおそくなり発音が不明瞭になる

*2:今だったら、小学校高学年ぐらいか?

*3:群衆