コリーヌ・セロー『サン・ジャックへの道』

フランス版お遍路サンの話 (多少ネタばれあり、でもこのレピューを読んだらもっと楽しめる)

スピリチュアルな旅と言っても、背に腹はかえられない。ブルジョア一家の兄は、会社の経営者に、妹はリセの教師に、弟はアル中の失業者になった。

家族の中にある格差。遺産目当てに兄弟は、巡礼の旅にでる。

日本の映画で好まれるのは結婚だけど、フランスでは遺産相続が多い。

ディスレクシア(失読症)と恋人目当てのアラブ人の若者。校長の娘、そして癌にかかった独り者の女性。
巡礼仲間は、それぞれわけありな人々だ。

巡礼中にみたスピリチュアルな夢が随所に登場する。

老賢者、グレートマザー、アニマ、アニムス、アニマルスピリット、シャドー、ユングの元型が夢のなかにいっぱい登場する。

登場人物はよくしゃべる。教師の妹と、ディスレクシア(トム・クルーズも実は同じ学習障害をもつ)
の若者は、次第に文字を教えることを通して、信頼で結ばれる。

文字を読めることになったことと引き換えに、アラブ人の若者は母親を亡くす。

それとなくフロイト主義(ラカン)の影響が反映されている。

巡礼を通してそれぞれの希望が叶えられる。

日本でもフランスでも自分の人生を見直すお遍路サンは大ブームである。

お遍路に出かけるあなたも、出かけないあなたも、ぜひこの映画を見ていただきたい。

まだ人生は捨てたもんでもない。

映画的美学的なことでは、あまり見ることはない。