黒沢清『叫(さけび)』


出演 役所広司小西真奈美葉月里緒菜伊原剛志オダギリジョー加瀬亮
ネタバレありにしようと思ったけど、やはりサスペンスはネタが分かると映画館に足を運ぶ意欲が
半減するので、それは映画を見てのお楽しみ。

前作『LOFT』では、ミイラの呪いが作品を読み解くキーワードになっていた。

今回は、偶然起きた複数の殺人事件に共通する海水による溺死の謎をめぐって、ある一人の女性にたどりつく。

『CURE』『回路』と同じような設定で、幽霊の怨念を描き黒沢美学を徹底化した作品。

幽霊を見たり、他の人には聞こえない叫び声を聞いたりすれば、科学としての精神医学の視点からは
幻覚や幻聴の症状があると診断されるだろう。

オダギリ・ジョー演じる精神科医 高木は、主人公に向かって、幽霊とは"真実の声"だと説明する。

二つの場面にだけオダギリは登場する。さして印象深い役ではないのは、残念。

ホラー映画(絵空事)の世界では、人間が幽霊に憑依されて殺人を犯して、とりたて奇異な話とは見なされない。

そういった映画をとりつづける監督はどうだろうか。やはり変わり者とみなされるに違いない。

黒沢清は、奇妙な作家として、都市の怨念(もしそんなものがあるとしたら)を描きつづける。

この映画では、人間の欲望のために乱開発して荒廃した湾岸の埋め立て地がその舞台となる。

人の生活が染み込んだ古いアパートや病院はそれだけでも不気味です。

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【ストーリー】
刑事・吉岡は、ある連続殺人事件を捜査しているうちに、妙な偶然や被害者の周辺に残る遺留品に自らの影を感じるようになる。馬鹿げた想像だと思いながらも、はっきりと無実を証明する術もない上、自分自身の記憶でさえ自らの潔白を語らない。そしていつしか「犯人はまさか自分では」と思い始める。そんなある日、第一の殺人現場を記憶を確かめるように彷徨う吉岡に、突如物哀しい女の悲鳴のような、叫(さけび)が襲う。現実なのか、それともどこか別の世界に迷い込んだのか。濁った水と湿った空気に閉ざされた世界は、現在と過去とで絡み合い、吉岡は知らぬ間にその謎に巻き込まれていく…。