精神病床削減

障害者自立支援法施行によって、2011年度までに、現在の病床数33万から5万床を削減する数値目標を設定。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?


また、3月17日付け 朝日新聞の朝刊

「私の視点」に精神科医の

下中野大人 氏の投書があります。

音楽評論家の吉田秀一氏の評論に「人に知られず、ひっそり生きているものを広場にもちだすべきでない」という一節がある。統合失調症の患者の多くは、人に知られず、ひっそり生きている人たちとも言える。彼らを「広場にもちだす」には、より慎重でなければならないのだと考える。


理想をいえば障害者が地域で普通にくらせるノーマライゼーションはいいのですが……



障害者対に対する福祉のカットが

この病床削減問題の実情といったところ。

さて、アメリカのオレゴン州、ポートランドにはこんな記録があります。

カウンセラーや医師たちが、ホームレスの人を交えて市民集会をしたところ、その中の少なからずの人が精神障害を抱えるひとだったというそうです。

彼らはやはり、病院や施設から追い出され、仕事をすることも、充分な治療もうける当てもなく

やむをえずホームレスになってしまった。

ポートランド市当局に対して、改善の要求を提出しても、残念ながら、なんの成果は得られなかったというのです。*1

当事者の声に耳を傾け、そのことが、わかっただけでもこの集会は意味のあるものだった。

そのように、この本にはまとめられています。

日本の現状はどうでしょうか。

「個々の患者について検討し、入院を継続する」決定をするとなると医師にもすごい勇気が必要ですね。


特に老齢の患者の場合は、社会に出すにはよほどの支援が必要になります。


自分自身も鬱病を抱え、当事者の立場から障害者を支援しようとする友人がいます。
島田啓介のVoice in Voice
患者さんの本音

今日は作業のあと、患者さんたちの本音を訊ねてみた。「自殺をしたいと思ったことは?」「長く入院してきて、もう社会に出たいと思っているか?」「自分の病名を知っているか?」こんな問いを、不思議なことだが受け止める機会が、当の精神病院にはほとんどない。

 医師も看護師も、はてはセラピストやワーカーも、患者をなんとか片付くべきところへ収めることしか考えていないことがほとんどである。

このブログでは、当事者の声を聞く、重要性がつづいて述べられています。

映画や小説は、統合失調症の人をひどく凶悪なものに描いてますが

それは、急性期の一時的なもので

回復期にあるひとは、どちらかといえば、おとなしく控え目で、ひと知らず生きている人たちです。

彼らは、いわば私たち社会の影*2です。

私たちの姿を照らす、いま一つの私として、

彼らは、数値目標や効率性だけが、人間すべてではないことを

示しています。

数値目標が優先される社会は、とても冷たい、嫌なものです。

彼らをやっかい者扱し、病院に押し込めたり、ホームレスにしてしまうのではなく

暖かくつきあうとしたら、

この国の暮らしは、今より、ずっとよくなるに違いありません。



*1:"The Deep Democracy of Open Forums"アーノルド・ミンデル著

*2:プロセス指向心理学の用語"city shadows"を借用して、作られた言葉。全体性の中で、+の部分が、効率が良いだとしたら、その対抗軸の部分には、 効率性が悪い存在が想定できる。日本の社会は効率性や数値目標を上げなければならないといった、観念にとらわれて、ゆったりと暮らすことが忘れられているように思うのだが、いかがなものか